研究内容

Research

マグネシウムワイヤ推進 -Magnesium Wire Thruster-

一般に金属の燃焼利用では,粉体形状が選択されます.粉体形状は比表面積が大きく,熱容量が小さいことから着火が容易なためです.一方,粉塵爆発に代表されるように,着火が容易であることと安全性は相反することは明らかです.

そこで当研究班ではワイヤ形状を用いることで,着火性と安全性の両立を実現しました.このワイヤ推進機は革新的であり,2020年に特許を取得しています.

これまでに1ミリメートル以下の線径をもつマグネシウムワイヤの燃焼速度の実験的取得を実施しました.また,この推進機の要となるワイヤ供給装置の改良を常に行っています.

2022年4月1日 文責:室原昌弥(D2)

粉体アルミニウム推進 -Powdered Aluminum Thruster-

アルミニウムはマグネシウムに比較して保護性の高い酸化被膜で覆われています.着火のためには酸化被膜を除去することが必要ですが,酸化アルミニウムの融点は約2300 Kと非常に高く,バルク形状での着火が困難です.

加えて,当研究班にてワイヤ形状での着火には成功しましたが,マグネシウムに比べて燃焼速度が非常に速く,ワイヤ供給が困難でした.以上の理由から,アルミニウムでは粉体形状を用いています.

粉体形状は特に着火が容易であるため,安全性に留意が必要です.当研究班では消防法を参考に,10マイクロメートル以上の大きさの粉体アルミニウムを利用しています.また,燃焼室以外で粉体アルミニウムと水蒸気が接することがないシステムにすることで安全性を担保しています.

これまでにシステム全体の成立性検討および,100kPa級水蒸気と粉体アルミニウムとの燃焼実験を実施しました.成立性検討では少なくとも100 mN級の推力発生を確認し,燃焼実験では燃料過多の混合比でより高い燃焼圧を達成することを確認しました.

2022年4月1日 文責:室原昌弥(D2)

CCPに関する研究 -Study on CCP-

金属燃焼ではCCP(Condensed Combustion Products/Particles)が発生することが多くあります.これは金属酸化物の沸点が火炎温度に匹敵するほどに高いことに起因します.

CCPは推進機において様々な悪影響を及ぼします.ノズルにおいては固(液)気混相流によるノズル効率の低下やノズルスロートの侵食もしくは成長が考えられます.また,燃焼室やノズル内部で一定以上の大きさに成長したCCPは宇宙空間に排出されると,デブリとして他宇宙機に対して甚大な影響を与える可能性があります.以上のように,CCPは推進性能と宇宙環境の両面において非常に重要な研究対象となります.

当研究班ではこのCCPの発生過程や発生量,分布,およびそれらの推進性能に与える影響に関しての研究を開始しました.本テーマは2021年より基盤研究(B)に採択されています.

これまでにハイスピードカメラおよび分光測定から,薄板形状のマグネシウムにおけるCCP発生の観察,温度分布測定を実施しました.

2022年4月1日 文責:室原昌弥(D2)