PPT(Pulsed Plasma Thruster)とはパルス駆動型の電磁加速推進機です。PPTの代表的なものは、下図に示した固体推進剤(主にテフロン)を用いたもので、宇宙開発の初期段階からすでに実用化が行われています。
通常PPTと言えば、下に示したようなテフロン・平板型電極を用いたものを指すことが多いですが、サイドからテフロンを供給するタイプや同軸型電極といった他のタイプもあります。
動作原理
・はじめバンクコンデンサには1〜3kVの電圧が充電されている。
・イグナイタに数10kVの高電圧パルスを印加し、微小放電を生じさせる。
・固体推進剤の一部が昇華し主放電を誘起させる。
・主放電によって推進剤の昇華がさらに進み電離してプラズマとなる。
・プラズマが瞬間的に流れた大電流により電磁加速を受けて排出され推力が得られる。
固体推進剤PPTの長所をあげると次のようになります。
・ 構造が簡単 ⇒ 信頼性高い
・ 貯蔵タンク、燃料供給系が不要
・ 待機電力が不要
これらの長所のため、特に構造が簡単で小型化が容易であることから、PPTはマイクロスラスタとして注目され、現在研究が盛んに行われているのです。しかし同時に次のような欠点も持ち合わせています。
・ 燃料利用効率が低い
・ 燃料が片減りを起こす
・ イグナイタの損傷が起こる
この中で最も問題とされているのが燃料利用効率の問題です。固体推進剤PPTは放電とプラズマの発生により受動的に燃料が供給されるため、消費燃料のコントロールが困難です。さらに主放電の終了後も推進剤の表面温度が高く燃料が昇華し続けるため、電磁加速を受けず低速で排出される燃料が発生し燃料利用効率の低下につながっているのです。
これらの欠点を克服するために現在数多くの研究が盛んに行われていますが、本研究室では液体推進剤を用いることによりPPTの性能を向上させることを提案しています。