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システム解析

概要

RPレーザー推進システム全体の費用、そこで必要な技術、輸送系としての特徴などの分析結果から、その実現によって、どのようなミッションが可能になるのかを考える。

RPレーザー推進機打ち上げ予想図


RPレーザー推進機の飛行解析

RPレーザー打上機によるGEO(地球静止軌道)への打上の実現可能性を検討した。
これまでに行ったことを以下簡単にまとめる。

①RPレーザー推進システムを有効に使うための軌道を提案した
②飛行解析を行い、単位レーザー出力あたり打上可能な最大ペイロード重量を示した
③RPレーザー打上機によるミッションの費用を評価した

①RPレーザー推進システムを有効に使うための軌道を提案した
RPレーザー推進ではレーザー基地の建設費用を抑えることが重要であり、また、機体へのビーム伝送の困難さを低減するため、地上に固定された一基のレーザー基地から打上げるのが現実的である。そこで、本研究室では以下のような打上げ軌道を提案した。



この軌道では、いったんレーザー推進によりGEOを超えることができる増速を行い、その後アポジ点(地球から最も離れた位置)で搭載キックモータによりGTO(Geo-Transfer-Orbit)に機体を投入する。その後ペリジ点(地球に最も近い点)において今度は搭載キックモータにより減速し、GEOに機体を投入する。地上から一気に機体を増速するため、レーザー基地は一基でよく、垂直上方への打上なので大気擾乱によるビームの減衰・広がり・振れ回りなどが最小限に抑えられる。さらにLightcraftでは垂直打ち上げの場合、レーザービームに機体が追随するように設計されており、ビームのポインティング、機体のトラッキングの困難さも低減する。

②飛行解析を行い、単位レーザー出力あたり打上可能な最大ペイロード重量を示した
数値解析で得られた各モードの推力とレーザー出力の関係から、飛行解析を行い、①のミッションを達成する場合の、機体の高度と速度の履歴を計算した。この時、パルスレーザー推進のペイロード比、打ち上げ可能最小レーザー出力も求まる。



なお、上記は速度(飛行マッハ数)の時間履歴を、単位機体初期重量あたりのレーザーパワー(PL/m0)をパラメターとしてプロットしたものである。パルスジェット・ラムジェット・ロケットモードを切り替えるタイミングの決定には、下図に示すエンジンサイクル解析を用いた。位置#3において熱閉塞が起こらない程度の状態から、大気密度の減少により、推力と空気抵抗が等しくなるまでの間ラムジェットモードを使用する、とした。

以上の結果から、単位機体初期重量あたりのレーザーパワー(PL/m0)と、単位レーザー出力あたりで打上げられる機体重量(mpayload/PL)との関係が分かった。



上図に見られるように、PL/m0が2.5[MW/kg]の時、mpayload/PLが最大値0.096[kg/MW]を取る。つまり、打上げる推進機の初期重量に対し、2.5[MW/kg]のレーザー出力で打上げる場合、最も効率よくペイロードを運べる、ということである。レーザー出力が小さいと加速に時間がかかり、燃料を消費するロケットモードに依存する割合が増えるためペイロード比が低くなる。しかしレーザー出力が大きすぎると、大気密度の濃いうちに高速になり、空気摩擦による損失が増えてしまう。このように、本解析で考えたSSTO型による輸送の場合、ミッションに関わらず打上に最適なレーザー出力が存在することが示された。

③RPレーザー打上機によるミッションの費用評価
RPレーザー打上システムでは、地上に設置するレーザー基地の建設費が最も問題となる。レーザー基地は大変高価である反面、一度建設してしまえば何度でも使用することができる。従って、打上システムを使用する回数が多いほど(維持費を考慮しなければ)、建設費の影響は小さくなる。このことについて、より具体的に説明するため、本解析では100tの宇宙太陽発電衛星をRPレーザー打上システムを使ってGEOに投入するミッションを考えた。輸送費用としては、レーザー基地建設費用、機体制作費、電気代を考慮した。比較のため、従来型の化学ロケットとしてH2Aロケットの場合(2tずつ50回に分ける)を示した。



このグラフでは、打上の回数と単位質量ペイロードあたりの輸送費用をRPレーザー打上機と化学ロケットについてプロットしたものである。RPレーザー打上システムでは打上の回数が1万回以上(今回の場合一回10kg以下)なら、化学ロケットに対して輸送費が半分以下になることが分かる。打上げる物体がさらに重く、小分けにできるような場合、この傾向はさらに強まる。(同様のミッションをμ波(電子レンジの光)で行うと、基地の費用が桁違いに安くなるため、最近ではこの方面の研究も盛んである。)
(打上回数が1万回以上、というのは1年間かけても1日30回程度の打上が必要となる。現在の大掛かりな化学ロケットでは1日30回の運用は到底不可能と思われるが、ここで提案しているのは1回当たり100kg程度の輸送機であり、推進する時間も上に示したように3分以下である。電車のような頻度で空にひかれた光の線路を行く輸送機といったイメージである。)

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