 研究紹介
- 低電力かつ水推進剤に適したスラスタヘッドの開発
高性能なホールスラスタを実現するためには,イオンビームを生成するスラスタヘッドの設計が重要になります.電磁場の相互作用でビームを作るホールスラスタは,物理的な挙動を正確に予測することが難しく,従来のキセノンガスを用いたものでも設計ツールが確立されていません.ましてや,水を推進剤に用いることは前例のない試みです.そこで,複数通りのチャネルを持つスラスタヘッドを開発し,100 W級かつ水での作動に適した設計指針を実験的に見出す研究を進めています.

- 耐腐食性を有する100 mA級熱電子カソードの開発
ホールスラスタの作動には,プラズマ着火やイオンビーム中和のための電子を供給するカソードが不可欠です.水推進剤への適合性と100 mA級電子電流の両立に向けて,腐食に強いLaB6(六ホウ化ランタン)を電子放出材に用いた,ガス投入が不要な熱電子方式のカソードを開発しています.熱電子カソードの課題は熱放射損失に伴う消費電力の高さと空間電荷制限による放出電流値の低さにあり,これらに対して多層断熱構造や電場形成電極を活用した性能向上手法を研究しています.

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