東京大学 大学院新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 & 大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻(兼担)
 

研究/プロジェクト紹介

小泉研究室あるいは小泉が関わっている研究およびプロジェクトを,過去も含めて紹介します.

学術研究(基礎)とプロジェクト(応用)は車の両輪のようなもので,互いに情報を交換/共有することが工学には必須です.研究を元に新しいプロジェクトを生み出し,プロジェクトを元に良い研究を進めることができると考えています.このために,研究とプロジェクトを両輪として,宇宙利用開発に貢献できるよう活動していきたいとおもいます.
 
プロジェクト紹介
 

小型水推進エンジン搭載ISS放出キューブサット :AQT-D(2018-Now)

本研究室において、将来的な宇宙空間での輸送インフラに貢献する、水を推進剤とした超小型衛星用エンジン及びその実証衛星の開発に成功しました。これにより世界初の「国際宇宙ステーションからの水推進エンジンを搭載した超小型衛星の宇宙への放出」の実現に向けた準備が整いました。近年、世界各国により超小型衛星の実利用が進み、超小型衛星用エンジンの需要が高まっています。しかし、従来の衛星用エンジンは高圧ガスや有毒燃料を用いているため、超小型衛星に向けた小型化や低コスト化が難しい状況にありました。AQUARIUS-1U打ち上げ機会が定期的にある国際宇宙ステーションからの超小型衛星放出においても、安全性の観点からエンジンの持込みが困難であるという課題を抱えていました。今回、常温常圧で液体貯蔵可能であり、安全無毒で取扱い性の良い水を推進剤とした超小型衛星用エンジン及びその実証衛星の開発に成功しました。開発した衛星は2019年度中に打ち上げ及び宇宙実証実験を予定しています。
エンジン仕様および開発チーム等の詳細は,AQT-D専用ホームページをご参照ください.
 

超小型水レジストジェット推進システム:AQUARIUS(2016-Now)

超小型深宇宙探査機EQUULEUSのメインエンジンとなる超小型水レジストジェット推進システム:AQUARIUSの開発を行っています.EQUULEUS(EQUilibriUm Lunar-Earth point 6U Spacecraft)は地球―月ラグランジュ点への航行を通じて太陽―地球―月圏での軌道操作技術を実証する超小型深宇宙探査機,水を推進剤として使用する超小型レジストジェットスラスタです.EQUULEUSは地球出発後,AQUARIUSを使用して月でのスイングバイを複数回実施し,最終的に月裏側にあるラグランジュ点(EML2)に到達予定です.EQUUSLEUSは,東京大学中須賀・船瀬研究室とJAXAが共同で提案した6Uサイズの深宇宙探査用キューブサットであり,エンジン担当の本研究室の他,多くの機関・大学と共同で開発を行っています.同探査機
は,NASAが2020年に打ち上げを計画している新型ロケットSLS (Space Launch System)初号機 Artemis 1 (EM1)の副ペイロードとして選定されたものです(EQUULEUSの詳細はこちら
 

統合型小型推進システム:I-COUPS [άɪkúːz](2013-Now)

小型宇宙機用の推進システムとして,軌道遷移用イオンスラスタと姿勢制御用コールドガススラスタを統合した小型推進システムの提案と開発を行っています.本研究室では,この推進システムをI-COUPS(Ion Thruster and COld gas thruster, Unified Propulsion System)と名付け,超小型新宇宙探査機PROCYONへ搭載し宇宙実証/実用を進めています(PROCYONは東京大学とJAXA/ISASの共同ミッションです).
高圧のキセノンガス系統を両スラスタで共通化すること
より小型化を達成し,50-kg級小型衛星に100-m/s級ΔV能力と8系統各20-mN級RCSの提供を実現します.2013年9月に開発がスタート,2014年9月にFMの開発が終了し,2014年12月に打ち上げ/運用開始,2015年3月には200時間超の運転に成功しました.2015年4月現在,探査機運用を継続しています.
 

ほどよし4号への小型イオン推進システム(2011-Now)

50-kg級小型衛星である”ほどよし”4号への搭載を予定して,超小型イオン推進システム(MIPS: Miniature Ion Propulsion System)の開発を,次世代宇宙システム技術研究組合と共に進めています.スラスタには低電力超小型イオンスラスタを採用し,小型衛星であっても100-m/s級のΔVを実施できる世界を目指しています.開発は2011年9月にスタートし,2013年3月にはEM(Engineering Model)の開発が終了,2014年2月にはFM(Flight Model)の開発が終了,2014年6月には”ほどよし”4号の打ち上げが成功しMIPS-FM,2014年10月には軌道上でのイオンスラスタ初作動に成功しました.
 

ドバイサット2用のマイクロ波放電式中和器(2008-2014)

Microwave discharge neutralizer宇宙航空研究開発機構(JAXA)が韓国の小型 衛星ベンチャ企業であるサトレックイニシアティブおよびUAEドバイのEIASTと共に進めているプロジェクトです.JAXAの國中教授と共にドバイサット2に搭載されるホールスラスタ(韓国開発)に使用するマイクロ波放電式中和器の開発を行ないました.ドバイサット2は2013年11月にドニエプルロケットによって打ち上げられ,2014年1月には同中和器およびホールスラスタの実証に成功しました.運用の様子はISASニュース2014年4月号(p.10)に記載されていますDubaiSat2 Operation
 

はやぶさイオンエンジン運用(2007-2010)

はやぶさのイオンエンジン復路運用(2007 Apr - 2010 Jun)を担当しました.実際の宇宙機というものに初めて触れる機会であり,とても勉強になる4年間でした.実験よりもはるかに限られた情報のみでの状態 予測,判断が即座に結果(やり直し不可)として現れてしまう緊張感,全員が上下なく話し合える議論,など多くのことが印象に残っています.
 

はやぶさカプセル回収(2008-2010)

やぶさカプセルの豪州での回収作業を計画段階から担当し,カプセル帰還の2010年6月には豪州で回収運用を行いました.こちらは完全に専門外での仕事になりましたが,その分様々な勉強/発見ができ ました.特に,野外での試験(実験)および隊(大集団)としての活動が印象に残ります(雨対策で学んだ自己融着テープは,プライベートのDIYでも役に立ちました).なお,本HPで使用されている写真の多くは,回収運用の際に(合間に)撮影したものです.