東京大学 大学院新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 & 大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻(兼担)
 

「水」を推進剤とするレジストジェットスラスタ

「水」は常温常圧で液体貯蔵可能であり,入手性・取扱い性に優れていることから,小型推進機の推進剤として注目されています.水レジストジェットスラスタは小型の電気推進機よりも高推力であることから,軌道修正・姿勢制御に使用することが想定されています.

本スラスタでは,液体の水を常温低圧下で蒸発させてから,水蒸気をノズルに送り,加熱して排出することで推力を得ます.比推力は70 s前後,推力は2-4 mNです.一般的な水レジストジェットスラスタは,水(液体)の蒸発と加熱を同時に行い加熱後の温度は1000℃前後に達しますが,本スラスタは蒸発と加熱の分離および低温蒸発を特徴としています.これにより衛星他コンポーネントの排熱利用や原理/構造の簡素化が可能となります.

プロジェクト

本スラスタは,水レジストジェット推進システムAQUARIUS(AQUA ResIstojet propUlsion System)として6UキューブサットEQUULEUS(EQUilibriUm Lunar-Earth point 6U Spacecraft)に搭載されています.EQUULEUSは2022年にNASAのSLSに相乗りして打ち上げ予定です.こちらの開発・運用準備は研究室一体となって行っています.詳細はこちら

6自由度スラストスタンド(推力測定装置)

キューブサットを用いたコンステレーションやフォーメーションフライトといったミッションでは,宇宙機の挙動を正確に把握し,制御することが必要不可欠です.水レジスト班では,スラスタの生成する並進3方向の推力と,各軸周りのトルクを計測することのできる6自由度スラストスタンド(推力測定装置)の研究を進めています.このスラストスタンドでは,宇宙機搭載プレートをバネにより吊下げることで6自由度の振り子としており,推力重量比の小さいキューブサット用スラスタの推力評価が可能となっています.6つの変位計で宇宙機搭載プレートの変位と姿勢角の変動を捉え,6つのボイスコイルモータ(VCM)で較正することで推力ベクトルやトルクを計測します.これまでコールドガスジェットを用いたスラストスタンドの性能評価や,水レジストジェットスラスタの6自由度推力計測などを行ってきています.