マイクロ波ロケット開発の現状と未来

2030s

地上設備建設および試験機の打ち上げへ

マイクロ波ロケット打ち上げには、100メガワット以上のミリ波パワーの大気伝送が必要であると試算されています。現在、ビーム基地を成立させるための要素技術(複数のジャイロトロンから出力されるミリ波を結合する技術など)の研究開発が進められています。

2020s

計算機上でロケット打ち上げシミュレーションの実施へ

2030年代以降のビーム発振設備建築を目標に、コンピュータを用いたマイクロ波ロケットの飛行軌道解析ツールの構築を目指しています。この際、実現に向けてボトルネックとなる課題を洗い出し、地上試験で解決を試みていきます。

2019

東大ジャイロトロンUT-94の設置

2019年、最大出力600キロワット、周波数94 GHzのジャイロトロン UT-94 が東大に導入されました。本開発はジャイロトロンの研究開発を進める国内の大学や研究機関(筑波大学、福井大学、量子科学技術研究開発機構)と共同で行われました。

2021年には、100 kW程度のミリ波出力とそれに駆動される周波数94 GHzでのミリ波支持デトネーション派の観測に世界に先駆けて成功しました。

ジャイロトロンUT-94を用いて、放電機構の周波数依存性の調査のみならず、今まで行えていなかった推進器形状の最適化を行っていく予定です。

2015-

筑波大と共同でプラズマ観測実験に着手

2015年、筑波大学プラズマ研究センターの28 GHzジャイロトロンを使用して、大気放電プラズマの観測に成功しました。今まで実験で使用してきた周波数170 GHzとは、放電構造やデトネーション速度が大きく異なることが分かりました。その放電機構の解明とともに周波数依存性の調査が必要であることが明らかとなりました。

2017年、発光分光によりプラズマ内部の温度が計測され、放電機構としてその非平衡過程が非常に重要であることが分かってきました。数値シミュレーションにおいてその非平衡過程を取り入れることで、実験で得られたデトネーション波伝播速度や放電構造を再現しつつあります。

2003-

東大でマイクロ波ロケットの原理実証

2003年、東大の小紫教授らは、当時の原子力研究開発機構JAEAと協力して、1メガワットのミリ波シングルパルスを機体に照射することでおよそ10 gの機体が高度2 mまで打ち上げました。

2009年、周波数およそ100 Hzの繰り返しパルスを機体に照射することで、持続的に推進力を生成することに成功しました。この際、重さ126 gの機体がおよそ1 mまで飛翔しました。

2012年、ジャイロトロン電源のスイッチング装置の技術発展により、大電力で高速なスイッチングが可能となりました。電力570 kW, 周波数最大200 Hzの繰り返しパルスを用いて時間平均推力30Nを達成しました。

一方で、繰り返しパルスを照射すると推進器内部に高温気体が残留し、プラズマの着火特性が変化することが分かりました。推進性能の予測、さらなる改善には大気の放電機構の調査が必要となりました。

2000

米国で「ライトクラフト」高度70mまでの打ち上げに成功

空気のレーザー支持爆轟波を生成することで搭載燃料なしで推進力を生成する実験がアメリカのMyrabo博士らにより行われました。

2000年、10キロワット級の炭酸ガスレーザーを用いて12.7秒間の飛行時間ののち、71mの高度におよそ50gのライトクラフトを到達させることに成功しました。

1970s

レーザーを用いるビーム推進が提唱

米国のKantrowitz博士らにより、レーザーによるパワー伝送でロケットを推進させる「ビーム推進」が提案されました。